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バクテリアの情報伝達経路には,ヒスチジンとアスパラギン酸による
リン酸基転位反応によって行われるものがあり,
二成分伝達系と言われます。
外界の環境変化を捉えるセンサーキナーゼ(ヒスチジンキナーゼHK)と
レスポンスレギュレータのペアから成ります。
センサーキナーゼのヒスチジンが自己リン酸化によってリン酸化し,
そのリン酸基がレスポンスレギュレータのアスパラギン酸に転移されます。
レスポンスレギュレータ〜は転写因子として支配下の遺伝子発現に関わります。
本実験は,E.coli の 二成分伝達系EnvZ/OmpR
のセンサーキナーゼ EnvZ の in vitro kinase assayです。
EnvZ はHis-tagタンパク質として発現,精製したものです。
EnvZは,HKドメインにはATP結合部位(G-box)があり,
そこからH243にリン酸基が転移されます。
EnvZ は二量体を形成しており,
その転移反応はサブユニット間の「trans」転移であることがわかっています(下図)。
WTのEnvZ では,リン酸基が転移されて,リン酸化型EnvZ がシフトアップします。
一方,ATP結合部位のG2 boxのグリシンをアラニンに置換(G401A/G403A)すると
リン酸基転移反応が起こらず,シフトアップは見えません。
また,リン酸化部位であるH243をアラニンに置換(H243A)しても
リン酸基転移反応が起こらず,シフトアップは見えません。
G401A/G403A と H243A を等量混合した場合は,
in vitro でサブユニット交換が起こり
ホモダイマーとヘテロダイマーが(理論上は1:1で)生成し,
互いに相補的にリン酸基転移反応を起こし,リン酸化型のシフトアップが見られます。
このことより,EnvZ のリン酸基転移反応が「trans」であることが確認されました。
EnvZ 以外の,リン酸基転移反応の機構が未知の二成分伝達系 HKについて,
Phos-tag SDS-PAGEを用いて,cis, trans を明らかにしています(関連画像参照)。
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