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バクテリアの情報伝達経路には,ヒスチジンとアスパラギン酸による
リン酸基転位反応によって行われるものがあり,
二成分伝達系と言われます。
外界の環境変化を捉えるセンサーキナーゼ(ヒスチジンキナーゼ)と
レスポンスレギュレータのペアから成ります。
センサーキナーゼのヒスチジンが自己リン酸化によってリン酸化し,
そのリン酸基がレスポンスレギュレータのアスパラギン酸に転移されます。
レスポンスレギュレータ〜は転写因子として支配下の遺伝子発現に関わります。
本実験は,E.coli の 二成分伝達系EvgS/EvgA
のin vitro kinase assayです。
His-tagタンパク質として発現,精製したものです。
EvgSは, HKドメイン,レシーバードメイン,HPtドメインの3つのドメインからなり
HKドメインのH721
レシーバードメインのD1009
HPtドメインのH1137
へと,3段階のリン酸基転移リレーを行う「ハイブリッドヒスチジンキナーゼ」です。
HPtドメインから,レスポンスレギュレータのEvgA D52 にリン酸基転移します。
「EvgS seif-phosphorylation」 はEvgSがATP存在下で自己リン酸化する様子を
Phos-tag SDS-PAGEで解析したものです。
Zn2+–Phos-tag SDS-PAGEでは,一種類のリン酸化バンドしか見られず
3段階のリン酸基リレーを可視化することができませんでしたが,
Mn2+–Phos-tag SDS-PAGEでは,3種類のリン酸化型バンドが見られ,
それぞれ図の右に示したように,同定しました。
(各リン酸化部位をアラニン置換して,バンドパターンを調べ,同定しました)
「EvgS and EvgA phosphorelay」 はEvgSがATP存在下で自己リン酸化し,
そのリン酸基がEvgA に転移する様子を解析しています。
EvgAがリン酸化したものがシフトアップしていることから
リン酸基転移反応が起こったことが確認できました。
「 EvgA seif-phosphorylation」 はEvgAが
アセチルリン酸存在下で自己リン酸化する様子を解析しています。
EvgAのAsp52がリン酸化したものがシフトアップし,
EvgS/A phosphorelayのEvgA シフトアップバンドと一致しています。
ヒスチジンやアスパラギン酸のリン酸基は,化学的に不安定で,
特に酸性条件下で容易に加水分解されます。
アスパラギン酸のリン酸基はアルカリ性条件下でも容易に加水分解されます。
中性条件下でも,両者の半減期は,Ser/Thr/Tyrリン酸基よりもはるかに短いです。
そのため,解析方法が少なく,二成分伝達系の研究例は多くありません。
Phos-tag SDS-PAGEは,このような不安定なリン酸基の解析にも適しています。
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